ホーム > 書籍レビュー > 『基礎からのiOS SDK』レビュー

『基礎からのiOS SDK』レビュー

基礎からのiOS SDK 基礎からのiOS SDK
鶴薗 賢吾 松浦 健一郎 司 ゆき 

ソフトバンククリエイティブ 2010-10-09
売り上げランキング : 7761

Amazonで詳しく見る by G-Tools

iOSとしての新しい入門書

iPhone OSは、2010年3月にiPadが出たことにより、iOSと名称を変更し、機能も大幅に追加された。この本は、そのiOSへと変わった後に出された入門書だ。そのため、最新の機能にも言及している点(ただし、入門書である以上『入門』者が知る必要のある範囲で)や、iPhoneのOSの進化の経緯についてもまとめられている点で、いままでの入門書とはひと味違っている。

iOSに至るまでの経緯を解説!

まず、この本は、タイトルに「基礎からの」とあるように、読者がiPhone開発の予備知識なしに読み進めることができる。まあ、それは入門書であれば当たり前のことなのだけれど、iPhone OSの成り立ちだけでなく、その元であるMac OS Xができた歴史までも解説されている点が丁寧だ。iPhone開発はMacでしかできないため、いままでWindowsユーザだった人もMacへと開発環境を移すことになる。自分も含めたそういった人のために、Mac、もっと言えば そのSDKについて簡単にでも解説があって嬉しい。

とにかく丁寧に!

肝心のiOS SDKに関しては、とにかく入門者が知っておけば良い範囲で、詳しく詳しく解説しようという意気込みが感じられた。例えば、iPhoneのGUI、その開発環境であるxcodeの各部分について、画像を積極的に用いて解説している。特に名称は取りこぼすことなく書かれている点は高評価だ。UI部品について、入門者がネット上やAppleの公式リファレンスで調べようと思っても、その名前がわからなくては、なかなか検索できない。見た目と名前はセットで覚えたいものである。

ただ、そういう懇切丁寧な説明が鬱陶しい人もいるだろう。自分もそういう「説明よりも実際に書いて覚える」タイプだ。そういった人は、説明部分を飛ばすか参考程度に斜め読みして、いきなり実践部分を読むと良い。立ち止まったら、また前のページに戻って丁寧な解説を読めば良いのだ。この本は、そういったリファレンス的な使い方ができる点で、ただの入門書ではない。ある程度プログラムが書けるようになっても、開発する際には、Macの隣に置いておきたい本である。

オブジェクト指向プログラミングの解説は?

しかし、ひとつ残念なのが、オブジェクト指向プログラミングについての解説が全くない点だ。クラス階層の図や、「サブクラス」・「スーパークラス」と言った用語が、唐突に出てくる。iPhone開発に必要なプログラミング言語Objective-Cは、すべてのオブジェクト指向の親とも言えるSmallTalkという言語の強い影響下にあるので、オブジェクト指向プログラミングという考え方は避けては通れない故に、この本の主旨とは少しずれていたとしても、少しくらい説明が欲しかった。入門者は、オブジェクト指向について書かれた本をもう一冊用意することになるだろう。

入門書のスタンダードとして

ともあれ、iOS SDKについてここまで詳しく丁寧に説明している本はなかなかない。ユニバーサルアプリケーションの作り方も載っており、筆者が冒頭で、「この本を読めさえすればアプリが作れるようになる」と言っている通りの内容だ(ただ、実機で開発できるようになるまでの手順が書かれていないので注意)。

いままで自分は、iPhone開発を始める人に、入門書として『はじめてのiPhone3プログラミング』を薦めてきたが、今後の入門書のスタンダードは、この本になるかもしれない。

カテゴリー:書籍レビュー
  1. まだコメントはありません。
  1. No trackbacks yet.

コメントを残す